“社員の1行報告が会社を変える” を読んで 

ayamizu

2008年09月25日 11:45

 

まず最初に特筆すべきは、経営コンサルタントが口にし、中小企業経営者の大半が“やるべき”と“やれば結果が出る”と理解していることを、きちんと筋道を立てて実行したことに敬意を表したい。
ちなみに私は、“愚直に、地道に”をモットーにしておりますます其の意を強くしたところです。
サイバーマニュアルの発想は、たぶんに社外取締役の人からの意見が反映されているのかと想像しています。
この経営改革に着手されたころ、米国では不況でもあり大企業も大きく変貌することを余儀なくされ、いろんな考え方や手法が導入されました。
会社の持つ全資源、とりわけ社員一人ひとりの体の中にのみ埋もれている知見・経験をいかに顕在化させ、活用すべきかが大きな経営課題になっていました。Center of Excellence(COE)として各社員の持つ貴重な資産を一箇所に吸い上げて一元化し、そして可視化し全社で共有する考え方が生まれてきました。
しかしながら、いままでの文化になれた社員にとって“変化する”ことは自己否定にもつながり、失業にもつながると警戒する人もいたりで、さまざまな波紋を起こすことは容易に想像できます。
そういった社員の気持ちを汲みながら、新しい企業文化を植えつけ、育てることは一筋縄ではいきません。
著書の中でブレーンストーミングを含むいろんな形で社員の意識を変えていくところは圧巻です。社員に消極的にあたらしい考え方、やり方を受け入れさせるのではなく、参加意識を高揚させたところが肝ではないでしょうか。社員の参加意識・責任感(Ownership)は重要と認識されていたはずです。
社内を財務状況も含め透明にすれば、社員のひと一人ひとりが自分の貢献度を確認でき従って参加意欲も増すのは当然です。にもかかわらず社内を透明にし、絶えず透明度を上げることを恐れる経営者が意外に多いのも事実です。
結局は経営者と社員の信頼関係に帰趨するのでしょうか。
今回書に著せるほど“うまく”いったことには、理由があると思います。
私が考えるところをいくつか挙げてみましょう。
まず危機感です。やはり雇われの社長ではない創業者一族の抱く危機感はDNAも相伴って説得力があります。真剣味、まさに真剣での勝負を迫る迫力があったのではないでしょうか。
その危機感を受け止める役員・社員もまた今回のケースはふつうの中小企業とは異なっていたのではないでしょうか。それは先代の社長〔創業者〕が、古参の役員や社員との間に確固たる信頼関係を築いてきていると想像しています。
現社長の抱く危機感を全社で同じような度合いで共有できたと考えます。
もうひとつは、社員の人が海外に研修に行ったり、外国人の社外取締役がいたりグローバル化が進んでいたことでしょう。まさに
Think Global , Act Local
を誰よりも早く実践していたと思います。つまり異文化にむやみに抵抗しないばかりか、納得したら素直に受け入れる素地もあったと考えます。そして、前に記述しましたようにOwnershipで全社員が自分たちのものとして計画から実行まで自らが実践したと思います。

私の興味があるのは、いろいろと紆余屈折の社内での議論を経て今後の自社の行く道が“サービス業”だと結論付けた、その発想の源泉に迫りたいです。
また今回の成功は会社の規模や業種にも関係したのではとも思ったりします。
創業者社長の人間性の影響が及ぶ規模、そして通信サービス業界という成長産業にいたこと。これらがあいまって成功を加速したと思う面もあります。
この問いにどう答えてもらえるのか、その答えの内容に興味があります。


友人が顧問をしている会社の社長さんの著書を頂戴し、その読後感をメモにしてみました。         
非常に勉強になるいい機会をありがとうございました。



  仙石 通泰著 (かんき出版) 
  社員の「1行報告」が会社を変える


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